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まいごのミーミ

加藤潤子・絵と文 至光社
定価 1,200円+税
ISBN978-4-7834-0299-2

もしも100匹の羊を飼っていて、その1匹が迷子になったら…。元気な子羊ミーミが森の中で大冒険。そして羊飼いは…。新約聖書のたとえ話をもとに。

まいごのミーミ(至光社)
にじのひろば - 2007年7月号掲載
えほんづくりのしごとばより

 まきばのひつじは羊飼いさんにとても大切にされていて幸せです。
そんな100匹のひつじの絵を描くのはとても幸せでした。はじめは言葉がなく描きあげた絵本でしたが、もう少し何かを伝えられたらと、ぴったりの言葉をさがすことにしました。

 そんな最中に、母が脳梗塞で倒れてしまいました。失語症と認識を少しわるくしたため、一緒に居ても、母だけひとりぼっちにされている様に感じ、とても心配で切なくなりました。
 ところが、母はわずかな言葉の中で、「イエス様ありがとうございます」と静かに長い祈りを捧げているのです。イエス様が一緒に居てくれていることを知り、本当に安心しました。そして、家に帰ってきた時の母の大きな喜びと安らいだ姿を見た時、母と子ひつじミーミのうれしさが重なりました。

​加藤潤子

この絵本をめくりながら
援助修道会 景山あき子

 子どもはきれいな目をしっかり開いて、新しい世界のことを何もかも見ています。つぎつぎと興味が湧いてきて、やってみたいことがいっぱいある子どもたちにとっては、まじめな研究であり、勇気ある挑戦であることが、私たちおとなからみれば困ったいたずらであり、目を離せない危険な冒険など…心配なことの連続になるのです。

 この七月号「まいごのミーミ」は、イエス様がなさった たとえ話がもとになっています。ほかのみんなといっしょに帰ればいいのに、自分だけ道草をくって夜の野原を見ようと群れからはずれてしまう一匹の子羊が、とうとう迷子になってしまいます。この子羊のさみしかった気持ち、やさしい羊飼いに見つけだされた時のうれしい気持ちを、絵本をよむ子どもたちは、きっと自分のことのように感じとるでしょう。ゆっくりページを繰りながら、子羊の気持ちの動きを十分味わってみたいと思います。

​ たとえというのは、子どもにとって分かりにくいものですが、ここではただ、このお話の中に自分が入りこんで感情移入できたらよいと思います。きっといつか、一生懸命に探してくれたこのやさしい羊飼いは神様のことで、道草して迷子になった子羊はわたしたち一人ひとりのことなのだと分かるでしょう。そして、このたとえ話をとおして、神様への感謝のこころが深まるだけではなく、自分が神様から愛され、大切にされている喜びをもつにちがいないと思います。​

※『にじのひろば』は、こどものせかいについている、おとうさま、おかあさま、先生がた向けの冊子です。絵本の作者による「絵本づくりの仕事場より」のほか、編集者の方などによる「この絵本をめくりながら」、エッセイ、詩などが綴られています。2020年度からは『ちいさなひろば』になっています。

絵本「まいごのミーミ」ご感想 〜 ありがとうございます!
久松英二 神父さま

2007年6月11日

至光社編集部にくださったお手紙より

 

 皆様、お元気でしょうか。このところ、さわやかな日々が続いていて、毎朝、林から聞こえるウグイスの「ホーホケキョ」を聞いて目を覚ましております。さて、7月号の「まいごのミーミ」が本日我が家にたどり着きました。加藤潤子さんが過去に至光社から出されたことがあるかどうか私は存じ上げませんが、パッチワークのような、アップリケのようなデザインを基調としたかわいくて優しい描き方がとても気に入りました。 

 絵本のテーマは、イエスの有名はたとえ話のひとつ「見失った羊」がもとになっています。このたとえは、本来は、一人の罪びとが神に立ち返ったときの神自身の喜びの大きさがいかほどのものかを印象深く教えるものでありますが、加藤先生の「アレンジ」の素晴らしさは、これをただ単に子供にわかりやすいものにさせただけにとどまらず、読む人が視点を羊飼いにも迷った羊にも自由に置き換えて読める楽しさ、感情移入できる楽しさを可能にしているということです。 

 こどもはまず迷った羊の立場で物語の筋を追い、迷ったというより一人で冒険するワクワク感を共有しながら読むでしょう。そして、さびしくなっていわばホームシックになる気持ちや羊飼いや仲間たちとの再会の喜びなどをかみ締めながら読み終えるでしょう。しかし、この絵本は、そのまま何の抵抗もなく、こんどは探す側、羊飼いの立場になって読むこともできます。つまり、探す側の気持ちにすんなり共感しながら読める、そういう両方向の視点を可能にする物語になっているわけで、そういう意味でとてもおもしろく、こどものこころに豊かな情感の世界を育ませる内容になっています。これで、私の蔵書に「至光社版こどもの聖書」のコレクションにまた一冊傑作が追加されました。ありがとうございます。 

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