
にじのひろば - 2012年10月掲載

子どもの頃の私は、なかなか「ごめんなさい」を言いませんでした。がんこちゃんでした。自分の正しいと思うことに一直線だったので「うそはつけない」との言い分です。悔しくって泣いて、助けを求めて泣きじゃくりました。だけど、怒られて喧嘩したって、すぐに許されて、仲直りして、みんな好きなまま。嫌いになったりしません。思い通りにいかないことばかり、ひとりではどこにも行けないけど、楽しいことはいつも目の前にありました。
大人になり、自分の思うままにできるようになると、正しさは揺らぎだし、喧嘩になったら嫌いになったまま…。心の中は曇ったり雨が降ったりのお天気続き。どうして良いのかわからないことばかり。子どもは不自由だけど楽しい。みんなを信頼しているからだと思う。
今、私はイエスさまを一直線に信頼できるように。子どもの頃の幸せが今もなお続くように。
加藤潤子
この絵本をめくりながら
援助修道会 景山あき子
ゆだねるちゃんは、子どもです。子どもですから両親や世話をしてくださる方々に、すべてをまかせ、毎日を楽しく生きています。動物だって、お花だって、木の実だって、空だって、そして天使だって神さまだって、みんな仲良しのお友だちです。
この絵本のページを繰りながら、ゆだねるちゃんについて行く時、私の心にイエス・キリストさまがくださった「よろこびの知らせ(福音)」が聞こえてきました。
人々がイエスさまのところへ幼い子どもたちを連れて来た時、弟子たちは、その人を見て叱り、追い払おうとしました。しかしイエスさまは、「子供たちを私のところに来させなさい。妨げてはならない。神の国はこのような者たちのものである」(ルカによる福音書18章16節参照)と言って、子どもたちを祝福してくださいました。
子どもたちのようーゆだねるちゃんのように、素直に差し出されたすべての美しいものと友だちになり、自分を包んでくれる大きな、あたたかい心の中に信頼しきって飛び込み、「ありがとう」と言いながら日々過ごしていけたら幸せです。
又、ある時、弟子たちが自分の中で誰が一番偉いかを論じ合っていると、イエスさまは一人の子どもの手をとって、「あなたがた皆の中で最も小さい者こそ、最も偉い者である」(ルカによる福音書9章48節参照)と教えてくださいました。自分は何も持っていないから、両手をひろげて世話をしてくださる方々から、すべてを受けるゆだねるちゃんの生き方ですね。
更に、イエスさまは祈る時にも安心して、ただ自分の心のままを神さまにお任せしていれば大丈夫ですよとおっしゃいました。「あなたがたの父は、願う前から、あなたがたに必要なものをご存知なのだ」(マタイによる福音書6章8節参照)と。
ゆだねるちゃんの生き方、それはすべての子どもの生き方であり、実は大人もそうありたい真心の生き方です。私たち皆が、この真心の生き方をして、毎日が幸せになるように…と心から祈り、願います。
※『にじのひろば』は、こどものせかいについている、おとうさま、おかあさま、先生がた向けの冊子です。絵本の作者による「絵本づくりの仕事場より」のほか、編集者の方などによる「この絵本をめくりながら」、エッセイ、詩などが綴られています。2020年度からは『ちいさなひろば』になっています。
絵本「しあわせな ゆだねるちゃん」ご感想 〜 ありがとうございます!
久松英二 神父さま
2012年9月10日
至光社編集部にくださったお手紙より
9月もそろそろ半ばにさしかかり、ようやく猛暑に責め立てられる時期から抜け出したようです。さて、10月号「しあわせな ゆだねるちゃん」、堪能しました!作者の加藤潤子先生は、聖書を題材にした絵本をこれまでたくさん発表なさってきましたが、とにかく子ども目線で聖書をアレンジする天才だという私の評価は決して揺るぎません。今回も、イエスは直接登場してはいませんが、バックボーンが子どもや子どものような心にかかわるイエスの教えであることに疑いはありません。それは、シスター景山が「この絵本をめくりながら」のなかでくわしく述べられている通りです。
それにしても、今回のお話はストレートですね。なんといっても、まず主人公の名前がストレート。神さまにすべてをゆだねて生きる子どもだから、「ゆだねるちゃん」。ウンもスンもない「そのまんま」が実に爽快!そして、ゆだねる、おまかせ、のテーマもストレートに描かれています。うれしいときも、泣いているときも、困ったときも、寝ているときも、感謝するときも、一人でいるときも、みんなでいるときも、にっちもさっちもいかないときも、「いつだって どこにいたって」おまかせ、おまかせ。ゆだねるちゃんの歩く道も「てんごくへつづくみち」っていうのも、びっくるするくらいストレートですよね。かみさまについても「いつもいつもまもってくれるやさしいかみさま」「かみさまはいつもいつもいっしょにいます」って、あまりに聞き慣れているせいか、こうしてあらためて文字にすると、逆に新鮮。「わからないときは・・・」のあとに何が来るのかと思ったら「いっしょにおいのりしましょう」だって!あまりの直球にひっくり返ましたよ。
こどものような単純率直な心がテーマであるとするなら、この絵本自体が、そのストレートさに見られるように、飾ることなく、思わせぶりなこともなく、素直にまっすぐ(それこそストレートに)展開している、まさに子どものような心の作品に仕上がっていて、お見事というよりほかにありません。この作品は、まるでこれまでの加藤先生の作品すべてをミキサーに入れてつくった濃厚ジュースみたいです。ああ、おいしかったなあ!